ENTHRALLS大阪出張前日にライブ参加予定を入れてしまうほどにはENTHRALLSが好きな僕。大阪での予定が終わったあとの懇親パーティーに差し入れる一升瓶を提げて下北沢へ!重かった・・・ちなみに荷物は駅のコインロッカーに入れましたよ(笑)。
仕事の都合で開演からは参加できなかったが、一番手のpalitextdestroyのアクトの途中から見ることができた。SHELTERに来るのはなんと4年ぶり。細い階段を降りてフロアに入ると、すでにたくさんのお客さん。男性客を中心に盛り上がっていて、ステージ上はまさに汗だくといった様相。palitextdestroyはベースレスの3ピースで、ギターと鍵盤とドラムスの構成。初めてみたが、歌モノポップから歌を抜いて強引に爆音ピアノポストロックに仕上げるとこういう感じになるなあと思った。ベースがいない低音不足は爆音で補っていて、ベース不在はほとんど気にならない。ただしメロディが普通で、僕には引っかかるところがなかった。熱のこもった激しいアクトはいいんだけど、そのメロで?と一旦思っちゃうと、我に返って冷めてしまうのです。だいぶ以前に9mmのライブを見たときに全く同じことを思ったのを思い出した。でもこういう感じ、好きな人には差さるだろう。それは何よりもこの日のフロアの盛り上がりが証明している。
《palitextdestroy》
河本拓也(Gt)
伊藤誠人(Key)
常見翔大(Dr)
2番手はbutter butter。このバンドも初めて観たが、いやーこれはいいバンド!青春の葛藤、青春の蹉跌を紡ぎ出す鋭い歌詞。ギターボーカルの鈴木くんが、少年時代に実際にいじめられていた実体験から生み出された曲の数々。実際の経験に裏書きされているから、歌詞に圧倒的な説得力がある。まるで、何かのドキュメンタリー映画を見せられているような感じ。同じように青春の葛藤を歌い上げるバンド、ということになるとplentyをすぐ思いつくが、plentyのほうは「なんだかとにかくモヤモヤしてつまんない」という漠然とした不安定な感情を歌っているのに対し、butter butterの歌詞世界は、学校にも家にも居場所のない少年の叫びそのものであって、はるかにリアル。あまりにリアル過ぎて、しかも歌詞に救いがないので、立て続けに聴くと、どんどん気持ちが内側へ向かって沈んで行ってしまうのはしょうがないなあ。でもレパートリーに1、2曲でいいから、幸福感あふれるキラーチューンがあれば、その曲で圧倒的なカタルシスが出せるから、もっといいライブが創れるはず。よかったら一度検討してみてください。
butter butterは、どの曲も、とても良い。メロディも符割りも、よく考えられている。爆音に頼らず、鈴木くんの歌を生かすようにバンドの音が寄り添っているところは、さすが歌詞が生命線のバンドならでは。本当にいいバンドだなあと心が震えたので、この日の出演者のライブが全て終わった後、物販で最新コンセプトミニアルバム「どこにでもあること」を買いました!次の日、大阪出張へ向かう新幹線の中で早速聴きましたが、やっぱり気持ちが悲しく沈みました。いじめは良くないよ!
《butter butter》
鈴木貴之(Vo&Gt)
平田裕亮(Gt)
浜田誠一(Ba,Cho)
吉良涼輔(Dr)
トリがENTHRALLS。このライブは先日リリースされた新譜「合法的浮遊」のレコ発ツアーのファイナル。3月から始まったツアーもこの日で28本目で、昨年より大阪から東京に活動拠点を移した彼らのいわば凱旋ライブ。佳子さんの足元と、青木くんのピアノの脇とにそれぞれ置かれた大きな電球が、曲に合わせて輝きを変える照明がいい感じ。新譜より「スケルトン志向」からスタートしたライブは大変な盛り上がり。長いツアーを終えた彼らを迎える観客で満員になったフロアは、それはそれは暖かい、お帰りなさいのムードであふれていて、一種のお祭りにも似た雰囲気。自然に湧き起こるハンドクラップに、男性客たちの野太いコール。そしてフロア中を埋め尽くした笑顔!ステージとフロアの波長が完全に一致して、共鳴して、それらすべてがバンドの音をぐいぐい押し上げて、高みへと昇って行く。たくさんライブを見ているけれど、こういうライブにはそうそうお目にかかれない。
いつものように気持ちのこもった佳子さんの力強い高音シャウト、喜びを満面に表しての中井くんのベースにみっちゃんのドラム!ストイックに力感あふれるピアノフレーズを繰り出し続ける青木くん。ツアーを経て、このバンドは確実に成長したなあと実感。とにかく、強靭さと多幸感が確実に増している。
ENTHRALLSの歌詞世界はbutter butterと同じく、やはり内側へ内側へと沈み込んでいく、心の苦しさに苛まれた人の、絞り出すような魂の叫びなのだが、それを歌う佳子さんの、こんなに幸せそうな、喜びにあふれた表情は初めて見た。最初のほうの佳子さんのMCで「ツアーで色んな場所に回って、色んな出会いがあって、そして悔しいこともあった」という話があったが、悔しい思いもしながら、でもこの日ツアーファイナルに満員の観客が待っていてくれたことにきっと万感迫る思いがあったに違いない。しきりに「嬉しい、嬉しい」「ありがとう、ありがとう」と繰り返す佳子さんを見ているだけで、バンドのこれまでの歩みがまるで自分のことのように思えて、なんだか嬉しくて、思わず涙がにじんだ。
ライブの中盤で中井くんが「皆さんに、もっといい景色を見せてあげたい。今日からまた僕らに付いてきてください!」といいつつ、「皆さん、もっと盛り上がれますか!!まだまだ盛り上がれますか!!」と煽ると、フロアの熱気もピークに。「ほんまにありがとう、ほんとにありがとう!」と繰り返す中井くんの姿もまた、感動的だったなあ。そのまま「シンクロナイズ」から本編トリの「Cocoon」で締め、そしてなんとなんと、堂々のダブルアンコール!
1回目アンコールは、演奏に入る前に告知を3つ。1つめはなんとまさかの「ツアー延長」、ファイナルじゃなかったの(笑)?!そして2つ目が、会場限定音源が9月にリリースされるお知らせ。これは嬉しい、またライブに行きたくなる。そして最後は「延長ツアーのどこかで、ワンマンやります!」だそうです。もう行くしかないじゃない!
1回目アンコールは新曲で、「大事な人が死んで、おばけになっても、おばけでもいいので逢いたい」という物語の、とても切ない可愛い歌。佳子さんの可愛い優しい歌い方に思わずきゅんとする。佳子さんがコールアンドレスポンスを煽って、フロア中に歌があふれたのがまた暖かくて、嬉しくて。そしてダブルアンコールは「元気でいてね」。Sentimental Toy Palette時代からのレパートリー。これから先、バンドの成長の歩みがさらに続きますよう。そして、この日同じ音のもとで一つに繋がったみんながまた再会できますよう。
本来なら、必ず佳子さんには挨拶して帰るところだが、翌日の出張を控えて早く帰る必要があったのでやむなく断念。でも出口でドラムのみっちゃんには挨拶できました。
とにかく、会心のライブでした。次回のENTHRALLSライブは7/18(金)渋谷MilkyWay。行きたいなあ!
《ENTHRALLS セットリスト》
1. スケルトン志向
2. シグナル
3. Howl
4. Music to my ears
5. 恋の罪
6. シンクロナイズ
7. Cocoon
En. 新曲
D-en. 元気でいてね
《ENTHRALLS》
井上佳子(Vo)
青木康介(Key)
中井傑(Ba)
吉田充利(Dr)